こんにちは!
自然素材・輸入壁紙を使った「住宅リフォームブログ」を運営している
東京都江東区のエーゼン大塚建設 代表の大塚健太郎です。
「今から9年前、2005年11月にマスコミ報道等で発覚した「耐震偽装マンション・ホテル事件」とはなんだったのか。疑惑の中心にいたとされる元ヒューザーの小島進氏が、事件の真相を赤裸々に明かす。
『偽装 「耐震偽装事件」ともうひとつの「国家権力による偽装」』
と言うコピーに惹かれ、先週この本を読みました。
当時世間は「ヒューザーも偽装に加担し、小島氏はその首謀者だ」と言う論調でした。
私も建築に携わる者として、姉歯氏と小島氏には強い憤りを感じていました。
ですから10年たった今、小島氏がどんな真相を語るのかとても興味深かったんです。
そんな過去の偽装問題に思いを寄せていたところ
今週、横浜でデータ偽装のマンション問題が発覚しました。
なんでいつまでたっても偽装がなくならないんでしょうね。
こんな不正は私のゼネコン監督時代は考えられませんでした。
施工技術も上がり、PCでデータ処理も早く正確に出来るようになっているというのに・・・
もしかすると工事現場のデジタル化が災いしてるのでしょうか?
昨晩、データ偽装のニュースを見ながら27年前の新入社員時代を思い出していました。
杭工事のトラブルに関するエピソードがふたつあったからです。
私の最初の赴任地は広島でした。
海を見下ろす井口台の寮から、宮島を通り、山口県大竹市まで通う新築マンションの現場監督でした。
ひとつめのエピソードは、そこで使用したPC杭のトラブルです。
横浜のデータ偽装の杭は現地でコンクリートを打つ『場所打ち杭』ですが
PC杭は工場で作ったパイプ状のコンクリート杭です。
重機のドリルで穴を掘り、開けた穴にPC杭を打ち込む工法です。
所定の深さまで杭を打ち込む確認のために
運び込まれた杭にスプレーで1m・2mとマーキングをしていきます。
こうすれば打ち込み中の工事写真に、現在何mまで杭が打ち込まれているのかが記録されます。
ところがある時、打ち込み中の杭が途中で止まってしまいびくともしなくなってしまいました。
海に近い現場で地盤が軟弱だったのか、掘った穴が途中で崩れてしまったようです。
地中に入りそびれたPC杭は煙突のようでした。
新入社員の私はおろおろするばかりで、とにかく主任に報告に行きました。
すると主任は「まいったな」とぼやいた後、どこかに電話をかけ始めました。
翌日、25Tのクレーン車と見慣れない機械が現場にやってきました。
ドーナッツ状の機械をクレーンが吊りあげて、輪投げのように煙突にかぶせます。
ブワーンと油圧機械が動き出すとドーナッツから歯が押し出され
グシャグシャ音を立ててPC杭を壊しました。
PC杭が地面まですっかり壊れると、翌日その横に新しいPC杭が打ち込まれました。
今度は所定の長さが打ちこめて大成功です。
「大塚~!新しい杭の位置を図ってこい!」
私が図面に落とし込んで事務所に戻ると、主任は今度は設計監理をしている設計事務所に電話をしました。
後日設計から送られたのは、打ち直した杭で計算し直した基礎の補強計画でした。
「大塚~!こっちの図面でフーチン(基礎)が大きくなった!間違えたらあかんぞ!」
事務所でドカッと椅子に座りっぱなしで、ほとんど現場に出てこない主任でしたが
トラブルがあった時の対応は見事でした。
杭が使い物にならなくなった時、
きっと工程の遅延や余計にかかる費用の事で頭を悩ませたと思います。
でも、そんな困った顔を一切出さず淡々と電話をかけ対応策を講じていました。
不適切な杭を解体撤去 ⇒ 新しく杭を打ち直し ⇒ 設計事務所に構造計算を依頼
そこには、データ偽装しようなんて発想はみじんもなかったでしょう。
工期が遅れるからとか
予算が厳しいからとかの『事情』で
見て見ぬふりをすることはありませんでした。
実はこのあと、打ち込めない杭が2ヶ所に出てしまいました。
もちろん最初の杭と同じ対応をして工事は進み、工期も予定通りに竣工できました。
現場監督としてしなければならない事を、私はこのタフな主任から教えられました。
ふたつ目のエピソードは4年後東京支店に異動になってからです。
西新宿5丁目で作る事務所ビルの新築工事現場に配属されました。
そこは丁度真下を大江戸線が通る場所で
15m以上深く杭を打つことが出来ませんでした。
そこで採用されたのが場所打ちの拡底杭でした。
直径1200㎜で堀始め、杭底の手前から直径1800㎜に広げる(拡底)という杭でした。
これをなんと手掘りで行うんです。
工事の手順はこうでした。
地下駐車場部分を重機で根切り(掘削)して8m掘り下げます。
その後、根切り底でやぐらを組んで井戸を掘るように縦穴を手で掘っていきます。
今回の支持層は厚い礫層(れきそう)で礫の大きさは20㎝もありました。
機械で掘れない理由がこの礫層であったと思います。(当時ちゃんと質問しませんでした)
礫は崩れやすく、そのうえ拡底する杭は重機作業には向かなかったのでしょう。
さらに私達の行く手を阻んだのが地下水です。
方南通りと山手通りの交差点から近いこの場所は、高台のように感じますが
地下水位はマイナス6mと思ったよりも浅い場所でした。
実際周辺の家には、当時井戸水をくみ上げていたお宅もありました。
地下水対策に効果的なシートパイルで土留めをしていたものの
根切り底付近では水が出始め
どんどん水が上がって来るの水を処理するために
6台の水中ポンプを24時間フル稼働してしのいでいました。
そんな危うい状況がいつまでも持つはずもなく
ある時、ポンプのオーバーワークで電気のブレーカーが落ちてしまいました。
翌朝現場は3mの池になっていました。
重機の引き上げが1日遅ければ、ユンボが2台水没しているところでした。
それ以後は発電機を追加して、電力をカバーするようにしました。
ただ8時間で燃料がなくなってしまうので、
200リッターのドラム缶に燃料をストックしておき
所長と私と交代で8時間おきに給油を続けました。
さて、そんな過酷な現場での杭工事管理はどうしていたのだと思いますか?
杭底確認は若い監督の仕事です。
つまり私が杭底まで降りて行って、支持層の状態を目視し、直径を測り、深さを測り、写真に納めます。
でもその作業は恐ろしかった~
周りでは他の杭を掘っているハンマードリルの音で職人同士の声も良く聞こえません。
「大塚さん、掘れたよ、確認して」
杭工事の職長の大声に促されて杭のそばに行くと、
すでに職人さんは上がってきていて誰もいない杭底で水中ポンプがグワングワン唸りを上げています。
横には組み立て済の鉄筋籠が準備されていて、私の杭底確認が終わるのを待っています。
2本の水中ポンプのホースをよけながら狭い縦穴を梯子で降りていくと、
礫の間から漏れ出る水が上の方から落ちてきます。
あまりに狭い穴なので、一人しか降りれません。
濡らさないように気をつけていた黒板も
写真撮影の頃にはすっかり濡れて、字も見えにくくなっています。
「もし、いま電気が落ちたら俺は溺れるのかな」
うす暗い縦穴の中で不安な思いもよぎります。
何とか写真を撮ったら、もうこんなところに用はありません。
ダッと梯子を上り職長に
「いいよ!」と合図すると
縦穴から水中ポンプが引き上げられ、代わりに鉄筋籠が吊り下ろされていきます。
鉄筋籠の設置が完了する前に水は半分以上も上がってきています。
あぁ、おっかない。
こんな確認作業を全ての杭で20回以上繰り返しました。
当時はWIN95が発売される前です。
現場にはワープロすらないアナログな時代です。
おっかない杭底確認検査ですが、データをねつ造しようとか前の杭の写真を使いまわそうとか
そんな発想は誰ひとり持ちませんでした。
ちなみに、横浜のマンションでは杭に使うセメント量まで不足していたそうですが
これも考えられない事です。
西新宿の現場では、杭底確認が終わり鉄筋籠が設置されると、
続けてコンクリートが打設されます。
その生コンを発注するのは若い監督(私)の役目です。
事前に数量を計算しておいて、万が一に備えて少し多めに生コン工場に発注します。
現場に来た生コン車のオペレーターからJISコンの伝票(JIS規格適合のコンクリート)を受け取り
それを杭ごとにファイルして品質管理書類を作ります。
パソコンが普及する前は、そうした現場監督の必死の管理で現場の品質は保たれていました。
それがなんでこのような偽装が起こりうるのか
私には理解できません。
マスコミの論調は、実際に施工した技術者や杭施工会社を非難しているようですが
工事の元請けゼネコンがちゃんと管理していればどのような偽装もふせげた様な気がしてなりません。
元請の監督さん、しっかりしろよ!
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